ウクライナ

【ウクライナ旅行記】キエフからオデッサへ 旅の移動トラブルはつきものだ 2日目

     キエフに一泊滞在した後、昼前にキエフ郊外にあるバスターミナルに向かった。バスターミナルに着き、オデッサ行きのバスの時刻を調べていると、ひっきりなしに客引きが話しかけてくる。始めは客引きの誘いを断っていたが、向こうも商売である。ノルマ制なので簡単には引き下がらずに、私の後をついてくる。客引きの男は私の横に立つと、「乗り合いバンの方が、バスより安くて早いぞ。どこに行くんだ?オデッサか?」と訛りのある英語で聞いてきた。

     確かにバスよりも乗り合いバンの方が早いし、乗り心地も良いのは知っている。しかし、昨夜にリヴネからキエフに向かう途中に車が故障したせいか、今日はバスで行こうと決めていた。不必要な移動のトラブルはこりごりだ。

     「オデッサまでバスで行きたい。」と客引きの男の質問に答えると、「400フリヴニャでオデッサ行きのバスがある。あと15分くらいで出発するぞ。」と言った。

     バス会社の時刻表を見ていたものの、すぐにキエフを発つバスはない。出発するまで1時間ほど待ち時間があるので、「15分で出発する。」という言葉に吊られてしまった。

     男の後をついていくと、ターミナルの端っこに古い派手な色合いのバスが止まっていた。バスのフロントガラスには、オデッサとキリル文字で書かれたプレートが置いてある。バスの前では、これからリゾート地に行くようなラフな服装をした人々がバスのチェックインを待っていた。男は空いているスペースを見つけると、「もうすぐバスが出発するから、ここで待っててくれ。」と言い残し、バスターミナルの建物の中に戻って行った。

     バスの前では、「デッサ、デッサ、デッサ」という言葉を連呼してオデッサに行く客集めが行われていた。タバコを吸ったり、コーラを飲んだりと、何をするわけでもなく10分くらいバスの前で待っていると、バスのチェックインが始まった。

     私の番になると400フリヴニャ支払った。すると、人混みの中から客引きの男が戻ってきて、支払った400フリヴニャの中から紹介料をバスの運転手から受け取っていた。

     客引きの話では15分くらいで出発すると言っていたが、車内に入って10分くらい待っていても、バスは動き出すどころかエンジンすらかかっていない。15分と言ってたはずのに、気づくと30分が経過していた。

     バスにトイレは付いていないので、トイレに行くついでに何時になったら出発するのか客引きに尋ねてみると、両手を開き「10分だ。」と答えた。10分という言葉を繰り返しているが、30分以上も停車したまま状況は変わらない。

     再びトイレに行った時に、いつ出発するのか尋ねてみた。客引きは相も変わらず「10分。」と答えた。男は10分という単語しかしらないのか、出発時間を訪ねるたびに10分という言葉を永遠と繰り返す。

     しかし、今度は客引きの男の方が正しかった。用を済ませてバスに戻ると、 バスのエンジンがかかっていた。ようやく出発する時が来たようだ。時間を確認すると、バスに乗ってから即に1時間半が経っていた。私をバスまで連れてきた男が言っていた「15分で出発する。」という言葉は何だったんだろうかと思ったが、出発さえしてくれれば問題ない。

     バスは走り出せば冷房が効いて車内が涼しくなると思っていたが、冷房がつくことはなかった。冷房の吹き出し口は付いているが、そこから風は一切出てこない。隣に座る男をみると、汗でびっしょりと濡れている。まるで風呂上がりの身体を拭く前みたいに肌が濡れおり、バスタオルを持っていたら男に貸したいくらい汗をかいている。他の男も汗をかいており、男の服が汗でびっしょりと濡れている。私も身体から吹き出てくる汗が止まらず、汗がシャツに染み込み始め、濡れた服が肌に付着して着心地が悪い。着替えがあればすぐにでも着替えたいぐらいだ。

     2時間くらい走っただろうか。バスは順調に走行していたはずだったが、走行したまま急にエンジンが止まってしまった。バスは次第に速度が落ちてくると、運よくあった路肩のスペースにバスを止めた。ウクライナ語でアナウンスが流れると、乗客たちは次々とバスを降りて外に出た。

  昨夜に引き続き、2日連続で移動トラブルに会うとは思わなかった。何が原因かわからないが、バスのエンジンかからないようで、まさにうんともすんとも言わない。

     行動力のある人は、壊れたバスにさっさと見切りをつけて、すぐにヒッチハイクしてオデッサに向かってしまった。こんな何もないところでバスは止まってしまい、いったいこれからどうなるのだろうか?キエフから新たなバスが来るにしても、2時間以上は待たなければならない。

     状況は何も変わらないまま20分くらいたった。始めは大人しく待機していた乗客たちは、一向に変わらない状況に嫌気がさし始め、ついにバスの運転手と口論し始めた。乗客の声には怒りがこもっており、言葉は理解できないが、明らかに不機嫌なのが伝わってくる。「いつになったらバスが動くんだ!」「待ち合わせの時間に間に合わないじゃないか!」「バスの修理ができないなら、新しいバスを手配しろ!」「誰が責任を取ってくれるんだ!」

     運転手は乗客の苦情から逃げるようにして草むらに避難した。なにやら2人で声を潜めて相談をしているが、何を話しているのかはわからない。

     何をするわけでもなく待っていると、赤い乗り合いバンがバス付近で停車した。車のドアにはエコラインとバス会社の名前が書かれている。英語が話せるウクライナ人に尋ねてみると、バスの運転手が、急いでオデッサに向かいたい人用に乗り合いバンを手配したと教えてくれた。

     早く現地に着きたい人は、車に荷物を乗せ換えてオデッサに向かってくれという話になった。しかし、多くの乗客たちは車に乗ろうとしない。車に乗ってオデッサに向かうのに追加で350フリヴニャ支払わなければならないからだ。

 馬鹿げた話である。即にキエフからオデッサまでの運賃400フリヴニャを支払っている。バスが壊れたのはバス会社の整備不良にもかかわらず、車に乗るなら追加で350フリヴニャ支払わなければいけない。片道の運賃なのに往復分を支払うようなものだ。

     バスの修理には時間がかかりそうで、いつ修理が完了するのかわからないのが悩みだ。そして、バスが直る保証もなければ、仮に走り出したところで再び故障する可能性もある。すでに片道分を支払っているのが悔やまれる。350フリヴニャの不必要な出費。物価の安いウクライナで350フリヴニャあったら何ができる?タバコだったら1カートン買ってお釣りでケバブが食べれる。ヘビースモーカーの私には痛い出費だ。

     結局、待っていても状況は全く進展しなかったので、350フリヴニャ支払って車に乗ることにした。車に乗ったのは全部で8人。多くの乗客は、いつ直るかわからないバスの修理を待つようだ。

  翌日、オデッサ中心地から郊外にある宿にローカルバスで向かっていると、オープンカフェのテラスで見覚えのある小柄で可愛らしい女の子が食事をしていた。バスは赤信号で止まっているので、じっくりと女の子を見ていると、昨日、同じバスに乗っていた女の子だった。どうやってオデッサまで来たのかわからないが、なんとかオデッサに着いたようだ。

  女の子の表情を見ていると、昨日のバスのトラブルなんてなかったかのように晴れやかな表情で、美味しそうにパフェのクリームを口に運んでいる。友人達と楽しそうに喋りながら、会話の隙間時間にパフェを口に運ぶ。甘い物を食べているときの女の子の表情は幸せそうだ。

  私は空いている窓の隙間から女の子に向かって声をかけた。女の子は眉毛をひそめて誰だあいつ?みたいな表情を浮かべ、こちらを見ている。昨日バスが故障して止まっているときに世間話をしていただけで、私のことを覚えていないのも無理はない。偶然見かけて嬉しくなり、つい声をかけてしまった。

  最初こそ怪訝な眼差しで私を見ていたが、すぐに女の子の表情は和らいだ。どうやら私のことを思い出してくれたようで「Good to see you.」と言い手を振ってきた。私は「無事にオデッサまでこれたんだ〜?」と聞くと、タイミングが悪いことにバスは信号が変わり話を遮るようにして走り出してしまった。

前日の話

【ウクライナ旅行記】リヴィウからキエフへ 旅の移動トラブルはつきものだ 1日目

       

 

 

error: Content is protected !!