中欧

ホステルで出会った老後を優雅に過ごす年配の旅人たち

     ゲストハウスやホステルに滞在していると、ゆっくりと旅をしながら老後を満喫している人たちに出会うことが度々ある。年配の旅人と話をしていると、60代の独身男性が多く、数年前に退職してのんびりと旅をしているようだ。

     観光に勤しむわけでもなく、物価の安い国で淡々とした生活をしている。滞在先で何か特別なことをするわけではない。朝起きて、朝食がてらに街を散歩する。昼ごろにゲストハウスやホステルに戻り、共有ラウンジでお酒を飲んだり、映画を観たりしている。旅先じゃなくてもできることばかりだ。

     滞在している国に飽きると別の安い国に行って過ごす。ホステルのドミトリーやゲストハウスで寝泊りをしていると、お金はあまりかからない。1泊1500円程度で、月に4万5千円。1泊1000円なら3万円と安い。

     ゲストハウスやホステルの特徴といえば、アットホームな場所が多くて家のようにくつろいで過ごせる場所が多い。共有ラウンジのソファーに寝そべって映画やスポーツを観ていたり、スマートフォンのアプリで若い女性を探していたりと、各自が自分の家にいるような感覚で過ごしている。

     ソファーに座りコーヒーを啜っていると、「女の子見つけたんだけど、この子どうかなー?」なんて聞いてくる年配の方がいた。スマートフォンのスクリーンを見ると、顔写真や年齢などの簡易プロフィールが載っていた。60代だというのに、20代中盤の女の子にメッセージを送る勇気に感服してしまった。

     60代の男性が、出会い系アプリで20代中盤の女性と遊んだり出来るの?と尋ねてみると、「コーヒーぐらいは一緒に飲んでくれるよー。時間さえ合えば、会って話をするくらいは簡単なことだ。」と教えてくれた。

     定年退職をした年配の方たちと話をしていると、少なからず影響を受けてしまう。いわいる金銭的な贅沢はしてないが、生活スタイルは私の考える贅沢そのもの。各地で見かける忙しなく観光地を巡る短期旅行者よりも時間に縛られずにのんびりと滞在している。

     時間に追われることなく生活できるのは最高の贅沢だと思っている。時間に追われながら生きるのは煩わしい。時間に追われず気ままに生きている。そういった生き方をしている人は、裕福でせわしなく生活をしている人よりもある意味では贅沢だなと思うようになった。旅をしていると国籍関係なくそういった考え方の人と出会うことが多い。

 私も老後に似たような生活がしたいと考えるようになった。物価の安い国を転々と渡り歩く。観光をするわけでもなく、ただ異国の地で淡々と過ごす。旅というよりも、異国の地に少しだけ根を植え付け生活する。観光ビザが切れそうになったら、別の国に移動する。出入国を繰り返すのはイメージが悪いが、定年しているなら何も怪しまれることはないだろう。

 独身老人の話では、独身ならたいしてお金かからないが口癖だ。年を重ねていくごとに食べる量が減るし、シニア料金もあるからと言っていた。健康ならさほどお金はかからないらしい。

 ある日、1週間ほど滞在していたホステルで仲良くなった年配の方がいた。毎日のように顔を合わせていたというのに、彼の姿をその後見かけることがなかった。ホステルの従業員に「あのおじいさん最近見かけないんだけど?」と尋ねてみると「スペインに行くと言って数日前にチェックアウトしたわよ。」と教えてくれた。きっと出会い系アプリで可愛いラッティーナでも見つけたのかもしれない。

 挨拶ぐらいしたかったが仕方ない。旅人はいつも気まぐれだから。

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