ウクライナ

国際バスで国境越え ウクライナのリヴィウからポーランドのクラクフへ

     ラテンアメリカの旅以来、久しぶりに国際バスで国境越えをする。陸路での国境越えは、ボリビアからチリに入国して以来で約5ヶ月ぶりになる。

     前日に購入した国際バス(600フリヴニャ約2400円)のチケットには、13:30分リヴィウのバスターミナル発と書かれているが、ホステルのチェックアウトが12時だったため、早めにバスターミナルに向かうことにした。

     バスターミナルに着いてみると、不思議な出来事が起こった。45分ほど時間に余裕をもたせて来たつもりだったが、バスの停留所には私が乗る国際バスが既に待機していた。バスの方へ向かって歩いていると、人混みの中から急に男が現れて話しかけてきた。「早くバスに乗ってくれ。すぐに出発するぞ。」と早口の英語でまくし立てると、私の腕を引っ張りバスの方へと誘導した。

    バスが出発するにはまだ時間に余裕がある。バスターミナルで軽い軽食を食べ、タバコをふかし、のんびりとバスの出発を待つ予定で来たつもりだった。

     バスのトランクに荷物を預けた後に車内を覗いてみると、不思議なことに車内はほぼ満席状態。出発時間まで30分以上もあるというのに、今すぐにでも出発できそうな雰囲気だった。この状況に困惑しながらも、「とりあえずトイレだけ行かせてくれ。」と男に伝えた。すると男は「わかった。早く行ってきてくれ。戻ってきたらすぐに出発するから。」と急かすようにまくしたてた。

     13:30分発のバスなのに、なぜ急かされているのだろうか。時間に余裕をもたせて来たというのに、すぐに出発するのは奇妙な話だ。時計が壊れているのかと思い、スマートフォンで時間を確認すると、時刻は12時50分と表示されている。遅刻をしてきたわけではない。

     トイレで用を足しながら考えていた。出発まで40分も時間に余裕があるというのに、車内には乗客が乗っているのだろうか。それも1人や2人ではなく、ほぼ満席状態なのが不気味な話だ。ここがボリビアなら、マジックリアリズム的なことが起こるもんだと気にも止めなかっただろうが、ここはウクライナである。

 ウクライナとポーランドには1時間の時差があり、バスのチケットに書かれている出発時刻はポーランド時間だったのかと思ったが、もしポーランド時刻に出発するならバスのチケットを購入した時に教えてくれただろう。

  トイレからバスに戻ると、バスは慌てるようにしてバスターミナルを飛び出した。時刻は12:55分。ずいぶん中途半端な時間だった。

    バスが走り出して10分ほど経ったころ、バスガイドがパスポートのチェックを始めた。私の番になると、パスポートを手渡した。すると「どこの国のパスポートだ?」と食い入るような眼差しでパスポートを見た後、返却してくれた。

  リヴィウからクラクフはウクライナからポーランドに行く旅の定番ルートだと思っていたが、ウクライナでは日本人というよりもアジア人を見かけることがあまりなかった。ウクライナに65日間滞在してみて、リヴィウではアジア人を見かけるものの、キエフやオデッサではあまり見かけた記憶がない。珍しがるのも無理はない。

     リヴィウのバスターミナルからポーランドの国境まで直線距離にして74キロ。1時間ちょっと走ったところで、あっという間にウクライナ側の国境へ到着した。

ウクライナ側の国境

       ウクライナ側の国境では、出国の手続きが始まるまで長いこと待たされた。国境手前のゲート前にバスを停車させると、国境のゲートが開くまで自由時間になった。バスを降りてタバコを吸ったり、トイレ休憩をしたりとゲートが開くまで各自気ままに過ごしていた。

ウクライナ出国

  1時間くらい経っただろうか。ようやくゲートが開くと、乗客は車内に戻り出国の準備に備えた。バスのトランクに積んである荷物を下ろし、荷物を持って建物の中に入る。建物の中は、3フリヴニャの有料トイレ、両替所、売店、そして空港などにある荷物の中を調べるXRAYの機会が設置されているだけで広々とした室内だった。

  荷物の中を調べる機械の前で一列に並ぶも、機械の調子が悪いのか、ここでも15分ほど待たされる羽目になった。しかし、待たされることに慣れている国民性なのか、愚痴を言う人は誰もいない。ようやく機械が動き出すと、1人1人ベルトコンベアーの上に荷物を乗せる。監視員はディスプレーで荷物の中をチェックしているが、誰も引き止められることはなかった。

  荷物を無事に通過させた後は、荷物を持って出口の前で立っている係員にパスポートを預ける。係員の手にはおよそ30冊くらいの厚つみになった束のパスポートを持っている。重なりあっているパスポートを見ると、青一色で統一されており、私を除く乗客は全員ウクライナ人であることがわかった。係員にパスポートを預け、次々に建物の外へ出て行く人たち。私も同じように係員にパスポートを手渡した。

  係員はパスポートを受け取ると、パスポートの顔写真を見た後に私の顔を見た。再びパスポートの写真を5秒くらいかけてじっくり見ると、私の顔を5秒くらいじっと見つめた。人に無表情でじっくり見られることもないので、変な感じがした。係員は再びパスポートの顔写真に視線を移した。そして私の顔を見る。いったい何回確認してるんだよと思ったが、まだ終わらない。

  係員はまたパスポートの写真を見ると、私の顔を覗き込んだ。係員はけしてふざけているわけではなく、真剣な眼差しで業務を行っている。パスポートの写真は2017年に撮った写真なので、見た目はそう変わらない。いったい本人確認するのに何に手間取っているのだろうか。

  パスポートの写真は眼鏡をかけてないから、眼鏡を外せと言われていないが一応眼鏡を外すことにした。しかし、眼鏡は関係がなかった。再びパスポートの顔写真を見た後に、私の顔を見た。そしてパスポートの写真をじっくり見ると、私の顔をじっくり見た。もういい加減にしてくださいよ!と口から言葉が出る寸前で、ようやく「行っていいよ。」みたいなことをウクライナ語で言った。

  他の人はパスポートを渡し、ざっと確認しただけでほぼ素通り状態だった。

  建物の外に出ると、再びバスのトランクの中に荷物を入れた。その後は、ウクライナの国境側でポーランドの国境に入る準備が整うまで30分ほど待たされた。ポーランドの国境では赤と白の旗が風に揺れてはためいている。その横では、欧州旗も同様に風に揺られている。

ポーランド入国

  ポーランド側の準備が整うと、バスはゆっくりとポーランドの国境へ向けて走り出した。走った距離は100メートルほどだろうか。ウクライナとポーランドの国境には、それぞれの国旗の色で塗られた小さなポールが立っていた。ポールとポールの間には、石が置かれており、おそらくこの石が国境線になっているのだろう。写真を撮ろうと思ったが、バスはすぐに通り過ぎてしまった。

        ウクライナ人はポーランドに入国するのにビザが必要なようで、パスポートと一緒に書類を提出している。いくら隣国同士で出入国には慣れてるとはいえ、書類の確認をするので少し手間がかかる。シェンゲン協定加盟国の人が乗るバスで来れば、もう少しスムーズに入国ができたのだろう。しばらく待っていると、私の番になった。

 パスポートを渡すと審査官はパラパラとページをめくった。そしてパスポートの情報が書かれている最初のページを開くと、どこかへ電話をかけた。言葉はわからないが、おそらく日本人はビザが必要かどうかの確認電話。電話は3秒ほどですぐに終わった。

        再びパスポートのページをペラペラとめくった。以前にシェンゲン加盟国に入国した日付を調べだした。パスポートにはスペインのマドリッド、ドイツのフランクフルトとベルリン、そしてハンガリーのブダペストのスタンプが押されている。滞在したのは合計で12日ほどだが、入国してから180日以上経っているのもあるので計算にて手こずっているようだ。

       結局、ウクライナ人よりも私の方が入国するのに時間がかかってしまったが、無事にポーランドに入国することができた。バスの乗客も次々に入国を済ませてバスの座席に戻ってくる。全員無事にポーランドに入国すると、バスはクラクフに向けて走り出した。

       ウクライナで走ってきた道とは変わり、ポーランドの高速道路は綺麗に整備されている。大陸続きなので、急にガラリと景色が変わったりすることはないが、バスから見る車窓の景色は、草原が続き、ぽつん、ぽつんと可愛らしいマッチ箱のような家が並んでいた。

        クラクフに向かう途中、小さな街のバスターミナルに寄った。しかし、バスから降りる乗客は誰もおらず、バスはすぐにバスターミナルを後にした。

       バスは順調に走っていたが、クラクフの手前15キロという中途半端な距離でパーキングエリアに寄ることになった。10分くらいトイレ休憩を挟むと、クラクフへ向けて走り出した。

クラクフに到着

   バスを降りてからホステルまで歩いて行くことにした。クラクフの街を歩いて最初に感じた印象は、路上に落ちているゴミが少なく、生活に余裕がありそうな人が多い気がした。そしてウクライナではあまり見かけることがなかったアジア人をよく見かけた。ホステルまで30分ほど歩いてみたが、中国からの団体観光客が街並みをキョロキョロ見回しながら歩いていた。確かにキョロキョロ首を左右に振ってしまうほど、クラクフの街並みは綺麗だ。

  夜、クラクフの中心地に行ってみると、多くの観光客が教会の前に集まっていた。普段ならそこまで人混みが気にならないが、疲れているときに人混みの中にいると、どっと疲れが込み上げてくる。

おわりに

 ウクライナのリヴィウからポーランドのクラクフまで300キロほどの距離だが、出入国を含めて7時間近くかかった。バスに乗車している時間は短かったものの、待機している時間が長い移動で疲れ果ててしまった。

  24時間営業をしているお店でサンドイッチを購入すると、ホステルに戻ってゆっくり休むことにした。

 

 

 

 

 

 

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