ウクライナ

【ウクライナ旅行記】美しき世界遺産の街を見下ろせるリヴィウの市庁舎

  ウクライナ滞在最終日、ポーランドに向かう出発祝いにリヴィウ市庁舎の展望台からリヴィウの街並みを見納めに行くことにした。この日は運が良く、連日続いた曇り日が嘘のように晴れ渡っており、展望台から見下ろす街並みがきれいに見れそうな予感がした。案の定、夕方になっても空には雲ひとつない見事な快晴で、新たな旅立ちを歓迎されているようで妙に気分が良かった。

リヴィウ市庁舎

      夏は陽が長いせいか、夜の21時まで営業している。しかし、入場は20時30分までとなっており、展望台に上がるまでに約8〜10分近くかかる。リヴィウ市庁舎は、リヴィウの建築の中で最も高さがあり、英語版ウィキペディアによると65メートルと表示されている。確かに小休憩なしでは登るのが大変なほど、長い長い階段が屋上まで続いている。壁4面に木造の階段が設置されており、漢字の「口」の字のように時計の逆回りに登っていく。「いったいいつまで登り続けなければいけないのか?」と重くなってきた足に鞭を打ち始めた頃、ようやく屋上にたどり着くことができる。展望台のチケット売り場から時間にしておよそ8分くらいはかかっただろうか。

展望台からの眺め

  リヴィウには合計3週間近く滞在したが、リヴィウ市庁舎の展望台から眺める景色が一番美しい。展望台からは360度見渡せ、視界に遮る物がないせいか遠くまで眺めることができる。展望台に来たのは今回で2回目だが、午前中や昼時よりも、陽の光が弱まり始める時間帯の方が綺麗な景色を味わえる。本来なら夕暮れ時に行きたかったが、私がウクライナに滞在していた時期は21時を過ぎてもまだまだ明るかった。写真を撮ったのは20時40分くらいだろうか。これから暗くなるまでに1時間以上はかかる。

      景色をぼーっと眺めていると、ウクライナ語に混じって英会話が聞こえてきた。会話に耳を傾けていると、「リヴィウは本当に美しい街だ!」とリヴィウの美しき街並みをたたえていた。声のする方を見ると、50代くらいの中肉中背の2人組の男が、太陽の日差しを浴び、目を細めながら遠くの景色を眺め街に酔いしれていた。

    確かにリヴィウは美しい街である。ホステルで出会った中国人の男は、「リヴィウに来たのは今回で2回目で、また来きたいな。」と言っていた。遠い中国の地から、何度も訪れたくなる魅力がこの街にはある気がする。

     リヴィウは世界遺産に登録されているせいか、街の中心地は多くの観光客で賑わっている。見所は中心地に集まっており、公共交通機関を使わずに徒歩で回れるほど小さな街。街には一息つける公園が多くあり、カフェでコーヒーを買って、木陰のベンチに腰をかけながら時間を気にせずのんびり過ごす。紙幣を使う贅沢はしていないが、リヴィウで過ごした日々は贅沢な時間だった。

     リヴィウでの日々を振り返っていると、突然、女が私の前に現れて話しかけてきた。とっさの出来事で何も言葉を返すことができなかった。というよりも、言葉が全く理解できなかった。きょとんと立ち尽くしていると、「今、中国語で話しかけたんだけど、あなた中国人じゃないのね。」と英語で言った。「え?中国人?日本人だし、中国語はニーハオしかわからない。漢字は読めるけど。。。」「私、中国で一人旅してたの。それで中国人がいるわ!と思って、懐かしくなって声をかけたのよ。」

     日本人の私から見ても、日中韓の区別は難しいし、間違えるのも無理はない。旅をしていると、中国人だと思われたり、韓国人だと思われたり、日本人だと思われたりする。よくあることなので気にも留めていなかった。リヴィウの景色も堪能したし、ホステルに戻ろうかなと引き返そうとすると、再び女が話しかけてきた。

    「あなたリヴィウにはあとどのくらい滞在するの?」「リヴィウは今日が最終日。明日からポーランドのクラクフに行くんだ。」「ポーランドに行くの・・・」と言うと、寂しげな表情を見せた後に「私、ポーランド嫌いなんだよね。」とぼそりとつぶやいた。

     ポーランドには行ったことがないし、私にとって馴染みのない国だからポーランドのことはわからない。ただ、ドミトリーの同室のポーランド女性は、非常にフレンドリーで感じが良い人だったので、ポーランドに入国するのを楽しみにしていた。 彼女がポーランドに戻るときに、なぜ連絡先を聞かなかったのかと、悔しさのあまり数日間眠れず、まくらがぐっしょりと濡れるほど涙を流した。もう、彼女に会うことはないのかと思うと、自然とため息ばかりついてしまう。

     彼女が帰国する日、ホステルにあるフランス製の洗濯機の使い方がわからずにいると、これからバスに乗って帰国する忙しいなか、「私、このタイプの洗濯機の使い方わかるから、使い方教えてあげる。」と言い、使い方を教えてくれた。ポーランド人は親日家というのは嘘ではないと思ったし、あるいは彼女が特別親切な女性だったからかもしれない。

     なぜ目の前にいる女はポーランドが嫌いなのか疑問に思ったので、「なんでポーランド嫌いなの?」と訪ねた。「なんかね。ポーランドってウクライナのこと嫌っているような感じが伝わってくるのよね。ウクライナ人ってわかると、態度が急に変わる気がするの。」と声を潜めて言った。隣国同士仲が悪いことはよくある話だが、それは政治的な話であって、庶民にはあまり関係のない話だと思っていた。旅をしていると「なんで中国と日本って仲が悪いの?」「北朝鮮と日本ってなんで仲が悪いの?」と聞かれることが度々ある。答えにくい難しい質問をいとも簡単に聞いてくる。

     「でも、あなたは日本人だし関係のない話ね。私の個人的な問題だから気にしないで。」と女は言った。隣国同士の民族問題のことを理解するのは難しい。第二次世界大戦時代のソビエト連邦ウクライナと、国境を接していたポーランド。政治的には仲が悪いだろうが、リヴィウにはポーランド人が国境を越えて遊びに来てるし、現在はどうなんだろう。

おわりに

     女と立ち話をした後にホステルに戻った。美しきリヴィウの街を展望台から眺め、景色には満足できたが、女の言った「私、ポーランド嫌いなんだよね。」という言葉が妙に引っかかったっまま、ウクライナ最終日を迎えた。

     そして長かったウクライナ滞在が終わり、いよいよポーランドのクラクフに向かう。

 

 

 

 

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