ウクライナ

【ウクライナ旅行記】リヴィウの街外れにあるリチャキフ墓地

  リヴィウの街外れにあるリチャキフ墓地は、墓地にもかかわらず観光名所になっている。リヴィウの中心地からトラムに乗って行くことができるが、天気が良いこともあり、のんびりと散歩がてら向かった。中心地から徒歩で約20分くらいかかったが、リヴィウの美しい街並みを歩いていると、あっという間に墓地に着いた。

  墓地の正面ゲートをくぐると、まだ早い時間にもかかわらず観光客でごった返していた。不思議な光景だ。墓地だというのに、観光客の手にはカメラが握られており、お墓の前で動画や写真撮影をしている。一見、不謹慎だと思われる行為だが、ここではお墓を撮影しても問題がない。

  チケットオフィスでは、入場料30フリヴニャ以外に、カメラ代10フリヴニャというチケットも売っている。入場料と撮影料を支払うと、さっそく墓地の中を歩いた。道なりに進んでいくと、お墓には見えないモニュメントが並んでいるのが目に入った。  よく見ると、いったいこの人は何をしているのだろうと思えてくる。物思いにふけっているようにも見えるし、することがなくて地面を見つめたまま時間をやり過ごしているようにも見える。私はすっかりこのお墓に魅了されてしまった。考えれば考えるほど謎が深まるばかり。いったい生前は何をしていたのだろうか。そもそも、なぜこのような形のモニュメントにしたのだろうか。  墓地の入り口付近には個性豊かな墓が多く、リチャキフ墓地以外では見かけることはない珍しいお墓が並んでいる。  奥の方へ進んでいくと、お墓というよりも彫刻と表現したほうがふさわしいお墓が多かった。リチャキフ墓地とは知らずにここに来ていたら、おそらく青空彫刻美術館と勘違いしてしまうほど、彫りが細かい立派な彫刻が建っている。

        さらに奥に進むと森から抜け出し、視界が一気に開けた。遠くには記念塔が立っており、記念塔の手前には同じ形をしたお墓がずらりと並んでいる。ここに来るまでに見てきたお墓は、19世紀と20世紀のお墓が多かったが、ここのお墓は亡くなった時期が2015年とつい最近である。お墓には軍服を着た兵隊の写真が飾らており、人によっては私服で写っているのも混ざっていた。お墓に書かれた年代を見ていると、20代前半で亡くなった兵隊が多かった。

  お墓を遠目に見ながら歩いていると、初老の夫婦が花束を持ってお墓へ歩いてくる姿が目に入った。初老夫婦の姿を目で追っていると、先ほど見ていた若い兵士のお墓の前で屈み込んだ。母親は持っていた色鮮やかな花束をお墓の前に置くと、祈りを捧げるようにじっとその場で固まった。父親は何をするわけでもなく、お墓を見つめて突っ立っている。2015年から3年が経ったとはいえ、つい最近の出来事である。遠目から見ても、初老夫婦の姿は寂しそうに映った。

  リヴィウは平和そのものなのに、街ではよく軍服を着た兵隊を見かける。公園のベンチの上に座る女性の太ももに頭を乗せて寝ている兵士。つかの間の休息なのだろうか。そんな当たり前の日常が早く過ごせるようになるといいなと思う。平凡な日常。退屈そうな響きであるが、平凡な日常を過ごせる環境にするまでに多くの人が犠牲になってきた。

国が大陸続きだと、少しでも自国の領地を拡大したくなる国が多い。実際にウクライナ東部にあるロシアとの国境付近は危険地帯だから、そっち方面には絶対に行くなと宿で仲良くなったウクライナ人が英語でアドバイスしてくれた。今回の旅で訪れた国でも、過去に戦争が起こり領地の奪い合いがあった。アメリカとメキシコの国境。チリ、ボリビア、ペルーの国境。インドとパキスタンの国境も仲が悪いという話をインド滞在中に耳にした。

 

 

 

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