ウクライナ

ドバイ国際空港からシャルージャ国際空港までぼったくりタクシーで移動した

 キエフからドバイに着いたのは早朝4時を過ぎたところだった。まだ外は暗いものの、中東のハブ空港のせいか、多くの観光客が行き交っていた。ドバイ国際空港は24時間フル稼働という言葉がぴったりなほど、多種多様な人々が入れ替わり立ち替わり消えては現れる。

 ドバイ国際空港からシャルージャ国際空港に移動したいが、まだ始発のバスが出るには時間が早かった。時間を持て余していた私はタバコを吸いに空港の外に出ることにした。ムワッとした空気が身体にまとわりつく。嫌な感じではない。9月のキエフは、天候が崩れると即に寒かったし、暖かい気候の方がいくらかましだ。

 外でタバコをふかしていると、タクシーの客引きの男が話しかけてきた。「これからどこに行くんだ?」「シャルージャまで行きたいんだけど、シャルージャまではバスでいくからタクシーには乗らないよ」そう言うと、男は別の客を探しに人ごみの中へ消えていった。

 空港内に戻ると、青いポロシャツに「May I Help You」とプリントされた案内人にドバイからシャルージャまでのタクシーの運賃を尋ねてみることにした。男の話では、200ディルハムから400ディルハの間くらいだと教えてくれた。400ディルハムだと、円にして12000円もかかる。念のためにネットでタクシーの料金を調べてみたが、そこにも最低200ディルハムはかかると書いてある。まだ始発のバスが出ていない時間。おそらく200ディルハム以上はかかるだろう。

 フライトまでは9時間ほど余裕があったので、多少時間や手間がかかってもバスで向かうのがいいと思った。始発のバスが出るまでは、タバコを吸いに外に出たり、空港内に戻ったりを繰り返していた。するとタクシーの呼び込みをする男に再び遭遇した。

 「まだ空港にいたんだ?」「始発のバスが出るまではどこにも行けないからね。ところで、ここからシャルージャ国際空港まではいくらくらいするの?」「150ディルハムだ」男の言った値段は、ネットで調べた値段や案内人に聞いた値段よりも安かった。

 私は時間を持て余していたこともあり、「もっと安くならないの?もう少し安ければタクシーに乗ってもいいんだけどなー」とタクシーに乗る気がないにもかかわらず値段交渉を始めた。すると男は「120ディルハムでどうだ?」とすぐに値段を下げてくれた。「120ディルハム?100ディルハムなら払ってもいいよ」「わかった。100ディルハムでいい。他にシャルージャ方面に向かう客を探すから、見つかるまでここで待っててくれ」そう言うと、男は別の客を探しに向かった。

 15分くらいすると、男は一人の客を引き連れて私のところに戻って来た。タクシーが止めてある場所までは、徒歩で10分くらいかかるという。正規のタクシーではなく、小遣い稼ぎで運転手をしているらしいので仕方がない。

 男の後を歩いていると「カム、カム」 という言葉を何度も繰り返した。「カム、カム」と単語のみを繰り返すので、命令を下されているようで腹が立ってくる。あるいは犬にでもなった気分になってくる。せめてカムの前に「プリーズ」くらいつければ良いのに。「カム、カム」という言葉を聞いていると、この男はインドやスリランカからの出稼ぎかなっと思った。インドやスリランカでも「付いて来い」と言うときはカムという単語のみを言うことがあったからだ。

     無料パーキングには、男の車が止まっていた。2000年代初期頃のセダンで、どこからみても普通の自家用車だった。車の扉を開けて車内を見ると、案の定タクシーのメーターは付いていなかった。後部座席に座ると、男はアクセルを踏み込みシャルージャ国際空港に向けて出発した。

 明け方の高速道路はガラガラだった。渋滞にはまることなく、順調にシャルージャに向かっている。途中で高速道路を降りると、乗客を降ろした。そして再び高速道路に乗ると、シャルージャ国際空港に向かった。

 高速道路を走っていると、遠目に空港が見えてきた。あと5分も走れば空港に着くだろう距離になると、男が話しかけてきた。「120ディルハム払ってくれ」「100ディルハムって言ったじゃないか」「いや120ディルハムだ」

 やはりインドからの出稼ぎだろうか。手口がインドのリキシャーにそっくりで思わず吹き出してしまった。国は変われど、やることはインド流。降りる間際になって急に金額を上げてきた。非正規のタクシーに乗っているから仕方がないが、私は「100ディルハムしか持ってない」と言って100ディルハム支払った。男はお金を受け取ったものの、これしかないのか?20ディルハム足りないぞと要求してきた。

 私はあることを思い出した。財布の中には、ウクライナのフリヴニャから米ドルに両替できなかった分の20フリヴニャが残っている。使い道のないお金で、両替所に持って行っても、金額が低すぎて拒否されるだろう。なぜなら20フリヴニャで約80円だからだ。

 私は男に渋々20フリヴニャ渡した。男はこれ日本のお金か?と声を弾ませて聞いてきた。男は日本語で書かれている日本円もキリル文字で書かれているウクライナのフリヴニャも区別がつかないので、私は「日本のお金だ」と答えた。「これディルハムだとどの金額になるんだ?」「60ディルハムくらいかな」と適当に答えた。金額が小さいと失望してしまいそうなので、ハッタリで大きめの金額を伝えた。円にして約80円だが、かなりもって約1800円ということにした。

 そうこうしている間に、車はどんどん空港に近づいていく。ジャンクションを抜けて空港に着くと、男は「すぐに車から降りてくれ。もし見つかったら、罰金が高いんだ」と早口で急かすように言った。私は車から急いで降りると、車のドアを勢いよく閉めた。

 男は捕まらないようにと、逃げるようにして車を急発進させて去っていった。

 エア・アラビアでネパールの首都カトマンズに向けて出発。

 

 

 

 

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