スペイン

ガリシア地方のビーゴは無人の街だった

 ポルトガルのポルトからスペインのビーゴまでフリックス・バスで向かった。スペインの西端にあるガリシア地方のビーゴは、ポルトからバスで約2時間半ほど北上した場所にある。

 2都市間の距離は僅か150キロメートルだが、ポルトとビーゴでは1時間の時差がある。グーグルマップによると、距離は153キロメートルで、車だと1時間半で行けるようだ。

ビーゴに着いた瞬間の印象

 ビーゴに到着したのは、正午を少し過ぎた頃だった。バスに預けていたラゲッジを受け取ると、バスターミナルを出てホテルに向かうことにした。バスターミナルを出てると、片側2車線の道路で緩やかな登り道を歩いた。

 バスターミナルを出て5分くらい歩いただろうか、私はある奇妙なことに気づいた。車通りが多そうな道路だというのに、全くと言っていいほど車が走っていない。5分間で見かけた車は、2台のローカルバスとトラックぐらいだった。

 私の横を勢いよく通り過ぎていくバス。だが、バスには運転手以外だれも乗っていないのが不思議だった。

 坂の途中で横道に入り、ショートカットしてホテルに向かった。小道の脇には雑草が生い茂っている公園があり、犬の散歩をしている老婆がのんびりと歩いていた。ビーゴのバスターミナルから公園まで8分くらいかかっただろうか、ようやくビーゴに到着して出歩く人を見かけた。

 公園を通り過ぎると、次は長い下り坂をくだった。坂の両脇には車が路駐されており、歩道にはレストラン、マーケット、バー、ホテルなどが連なっている。昼過ぎだというのにレストランは開店しているのか、店内には人の気配がない。そしてマーケットの中は真っ暗で、誰もいないのが不気味だなと思った。

 なぜ14:00過ぎという時刻にもかかわらず、この街には人の気配がないのだろうか。人通りがありそうな道を歩いているというのに、不自然すぎると思えるほど人や車とすれ違うことがない。そうこうしているうちに、バスターミナルを出てから15分ほどが経ちホテルに到着した。

ホテルにも人がいない?

 ホテルの扉を開けて中に入ると、左側にカウンターがある。本来ならそこに受付をする人がいるはずだが、やはりここにも人の姿がない。私は「オラー?オラー?」と大きな声で繰り返し、ホテルに誰かいるのか確認した。そしてカウンターの上に置いてあるベルを「チリン・チリン・チリン」と連続で3回ほど鳴らした。

 少しすると受付の横にある扉が開き、中から人が出てきた。「今日から4日間泊まる予約をしている者ですが?」とスペイン語で伝えると、チエックインの手続きが始まった。私の滞在するホテルはコンピューターで個人情報を管理をしているのではなく、ノートに手書きで滞在者の情報を記録している。

 パスポートを渡して個人情報を書き込んでいるときに、私は「ホテル付近にレストランはありますか?」と訊ねた。ビーゴに到着してから昼食を食べようと考えていたので、ポルトを出てから何も口にしていない。部屋に荷物を置いたら、すぐにでも昼食をとりたいほどお腹が空いている。

なぜビーゴは無人の街なのか謎が解けた

 受付の女性は思ってもみなかった言葉を口にした。「どこの店も閉まっているわ。空いているお店あるかしら?」「え?閉まっているの?マーケットは?」「今、シエスタ中だから、レストランもマーケットも閉まっているはずよ。」

 ビーゴに到着したのは、ちょうどシエスタの時間帯だった。どうりでバスターミナルからホテルまで歩いてきたものの、人の気配がないはずだ。

 ビーゴに来る3週間ほど前に、スペインのバルセロナとサラゴサに滞在していた。しかし、2都市ではシエスタの時間でもお店はやっていたし、普通に出歩いている人がいた。ビーゴのように街に人の気配がなかったら、さすがにシエスタ中だと気がつくだろう。

 多くの観光客を魅了するスペインのバルセロナと、地方都市のビーゴでは同じスペインという国でも習慣が違うのかもしれない。

シエスタ中に街を歩く

 チェックインを済ませると、部屋に荷物を置いて昼食を探しにホテルを飛び出した。受付の人が言っていたように、歩いても歩いても営業しているレストランを探すことはできなかった。

 中心地に向かうと歩いている人を見かけるものの、その数は普段に比べると圧倒的に少ない。そして歩いている人に比例するように交通量も少ない。シエスタ中に歩く街は、まるで何かしらの原因で崩壊してしまったゴーストタウンを歩いているようで不気味だ。

 燦々と輝く夏の太陽の下にもかかわらず、街を行き交う人の姿が少ないので街に活気がない。いや、シエスタ中は活気がないという言葉よりも、夜中に街を歩いているような感じだ。

 おそらくビーゴで生活する人達は、シエスタ中だからお店がやっていなかったり、出歩いている人が少ないのは当然と思うのだろう。だが、観光客の私は非常に困惑してしまった。お金を持っていても、店がやっていないので何も買えないからだ。

 結局、昼食を探すのを諦めることにした。夕方になればお店が開くので、シエスタが終わるまでの辛抱だと言い聞かせた。しかし、私のお腹は「俺にはシエスタなんか関係ない!」というように「ぐぅーぐぅー」と音を立てて泣いている。シエスタのことを知っていれば、ポルトで昼食を買うなり、昼食を食べてくるなりしてきたのに・・・・・。

おわりにシエスタについて考える

 街を歩いていると、シエスタ中でも営業している個人店はあった。アイスクリーム店だったり、パン屋だったり。しかし、大型のマーケットはどこも閉まっていた。

 夜なって気がついたが、この地域にはシエスタが必要だと思った。22時を過ぎてもまだまだ空は明るい。ホテルの部屋でいつになったら暗くなるのか、窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。夏のスペインは暗くなるのが遅く、太陽は沈むことを拒んでいるかのように思えてくる。23時くらいにようやく暗くなり始める感じだろうか。

 私が滞在していたホテル付近のマーケットは、22時まで営業していたし、シエスタを入れないと勤務時間が長くなってしまう。バルセロナやマドリッドのような都心部なら、いくらでも働く人を確保できるだろう。しかし、ビーゴのような地方都市は人口が少ないので、働く人を探すのは大変なのかもしれない。地元の人たちからすると、より効率的に生活をするのにシエスタは当然のことなのかもしれない。

 暮らしている地域によって感覚が違うが、日没が22時30分っていうのは遅く感じてしまう。日没が22時過ぎなのは初めての経験だったので、こういう地域もあるのか〜と沈みいく太陽を見ながら関心してしまった。

 山と海のある街ビーゴ。ビーゴからさらに北上すると、スペイン巡礼路の終点「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」に到着する。

 

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