2019欧州の旅

アルバニアの入国審査官は無愛想だった

 初めはセルビアに行こうと思ったが、プラハからベオグラードのチケットが予想以上に高かった。プラハからハンガリーのブダペストを経由してベオグラードまでバスで行くこともできるが、乗り換えなど含めると20時間以上もかかるのでやめた。

 そんな理由からアルバニアというギリシャの北にある国に行くことにした。飛行機の値段はプラハからティラナまで片道1万円。

初めて行く国・アルバニア

 プラハからアルバニアの首都ティラナに向かう日は快晴だった。しかし、飛行機は待てども待てどもボーディングが始まる気配がない。ボーディング時間が過ぎた頃に突然アナウンスが流れた。「天候不良のため、あと1時間ほど遅れます。」。

 周りの客たちは呆れた顔をしながらも、ボーディングが始まるのを静かに待っていた。私も椅子に座りながら、ガラス越しに見える外の景色をぼんやりと眺めていた。雲一つない夜空が広がっているので、「天候不良」という言葉が言い訳に聞こえる。他に何か原因があるのではないか。

 飛行機は1時間ほど遅れてプラハを発つことになった。私は機内である事について悩んでいた。ホテルのチェックインが0時に終わってしまうことだ。予定時刻にフライトしていれば、ホテルのチェックインに余裕で間に合っていたが、1時間も遅れると間に合わない可能性がある。

 入国審査、荷物の受け取り、そしてタクシーでホテルまで向かう時間。ざっと見積もってお1時間くらいかかるかもしれない。

 22時50分。アルバニアの首都ティラナに到着した。残り時間1時間10分。

入国審査でトラブル?

 空港の中に入ると、すぐに入国審査の列に並んだ。入国審査を受ける人たちが長い列をつくって並んでいる。入国審査にかかる時間は、1人あたり1分くらいだろうか。

 長かった列はどんどん短くなっていき、やがて私の番になった。「ハロー」となぜか英語であいさつをした後にパスポートを渡した。審査官はパスポートを受け取ると、パラパラとページをめくり始めた。審査官がパスポートをめくっているのを眺めていると、審査官が突然話しかけてきた。「⭐︎⚪︎▽⭐︎◽︎◽︎⚪︎▷⭐︎」アルバニア語だろうか。何について話しかけているのかまったく理解できない。

 私は質問に答えることができなかったので、返答することができずにいた。すると、再びアルバニア語で話しかけてきた。「⭐︎⚪︎▽⭐︎◽︎◽︎⚪︎▷⭐︎」。一刻も早く入国審査を終えてホテルに行きたいというのに、面倒な入国審査官の列に並んでしまったと後悔した。

 隣の列に並んでいる乗客たちは、次々と審査を終えてアルバニアに入国している。ふと後ろを振り返ってみると、私の後ろに並ぶ乗客たちの表情が怒りに満ちていた。フライトが1時間遅れ、目の前にいる外国人が入国審査でもたもたしているからだろうか。

 私もすぐに入国審査を終えたい心境だ。ホテルのチェックインは0時に終わると書いてある。このままでホテルが閉まってしまうからだ。

 入国官はアルバニア語が通じないとようやく悟ったのか、ぶっきらぼうに英語でこういった。「チケット」。私は思わず「何のチケットですか? 」と聞きかえした。審査官は私の目をジロリと鋭い眼差しで見ると「飛行機のチケットだ。」と怒りがこもったような口調で言った。

 アルバニアからの出国チケットを見せろということだろうか。私はあいにく出国チケットを用意していない。国によっては入国審査で出国チケットを持っているか聞かれる時があるが、十中八九聞かれない。もし出国チケットについて聞かれるとしたら、飛行機に乗る前のチェックインのときだ。私は正直にチケット持っていませんと伝えた。

 審査官は 「は?」と驚いた表情を浮かべた。いや、目の前に立つ見慣れない外国人が予想外の返答だったので、言葉が口から出てしまったというような感じだ。私もまさか出国チケットについて聞かれるとは思わなかったので「え?」と思わず言葉が漏れてしまった。

 「あんた飛行機のチケット無しで、どうやってここまできたんだ?」「どうやってって、飛行機に乗ってプラハから来たんです。」「そのチケットを見せてとさっきから言ってるんだ。」

 初めから乗ってきた飛行機のチケットを見せてといえば理解できたのに、「飛行機のチケット」だけでは「何の飛行機のチケット」なのかわからない。

 乗ってきた飛行機のチケットを渡すと、審査官はコンピューターのキーボードを叩いた。そしてパスポートを返却してくれた。パスポートにはアルバニアの入国スタンプは押されていない。ヨーロッパではパスポートの一番後ろのページにスタンプを押す国(旧ソビエト)もあれば、パスポートに入国スタンプをおさない国もあるようだ。

おわりに

 預けていた荷物を受け取ると、空港の外に出た。すぐにタクシーの客引きが近づいてきて話しかけてきた。「もうこの時間はバスはない。ティラナ市内までタクシーで2500レク(約2500円)だ。」「わかった。0時にホテルが閉まるから、なるべく急いでほしい。」

 ホテルに到着したのは0時10分。チェックインの時間は過ぎてしまったが、私が来るのを待っていてくれたようだ。無事にチェックインを済ませると、部屋に案内してもらった。部屋の窓を開けると、ここは首都だと思えないほどティラナ市内は寝静まっていた。

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