ウクライナ

ウクライナの首都キエフから始まる東欧の旅

  イスタンブールからキエフまでのフライトは約2時間で、寝る間もなくウクライナに到着した。飛行機を降りて入国審査の順番待ちをしていると、すぐに私の番になった。ウクライナ語がわからない私は「Hello」と言いパスポートを渡した。入国審査官は「Hello」と一応英語で返してくれたものの、なんだか無愛想な感じがした。ウクライナ語の挨拶ぐらいは覚えてくればよかったと思ったが、急遽ウクライナに来ることになったので仕方がない。

  入国審査官は無表情でパスポートのページをパラパラとめくると、パスポートの最後のページに入国スタンプを「ガシャン」と勢いよく押した後に返却してくれた。何も質問されず、滞在日数すら聞かれなかった。

  受け取ったパスポートの入国スタンプを眺めていると、キューバに入国した時を思い出した。キューバに入国した時も同様に後ろの方のページに入国スタンプを押してくれた。おそらく世間的に評判の良い国とは言えないせいか、気を使って目立たないページにスタンプを押してくれたのだろう。

  空港内を歩いていると、ウクライナの首都にある国際空港にもかかわらず、人の行き来が極端に少ない気がした。歩いている人は外国人観光客よりも、海外に出かけていたウクライナ人が多く歩いている。キエフに来る前は、バンコク、イスタンブールと世界中から観光客が集まる国際空港にいたせいか、多彩な人種が行き交っていた。ボルィースピリ国際空港は対照的にローカル色が強く首都の国際空港というよりも、寂れた地方都市の空港という言葉がふと浮かんだ。

  まずはATMで現金を引き出そうと空港内をふらふらと歩いてみたが、ATMを見つけることができなかった。どこの空港でもATMは目立つ場所にあるのに、歩いても歩いてもそれらしき機械は見当たらない。しかたがなく両替所で手持ちのユーロからフリヴニャに両替することにした。空港の両替所は大抵どこの国もレートが悪いが、なぜかボルィースピリ国際空港では両替レートが良かった。手数料を多く取られることもなく、看板に表示された通りのレートで、買いと売りの差額が少ないので得した気分になった。

ボルィースピリ国際空港からキエフ中心地へ

  空港の外に出ると、バス乗り場に一台のマイクロバスが止まっていた。バスの番号を見ると、322番と書かれており、このバスでキエフの中心地まで行くことができる。空港からキエフの中心地までは約30キロで、渋滞にはまらなければ45分もあれば着くだろう。車内に座って出発するのを待っていると、バスの料金を回収しにおばちゃんが乗ってきたので200フリヴニャを支払った。

  バスは満員になったところで走り出した。ボルィースピリ国際空港はキエフの郊外にあるせいか、渋滞にはまることなく順調に進んで行く。街中に近づいていくにつれて交通量が増えてきた。それと同時にビルボードの数も増えてくる。ビルボードには車の広告と化粧品の広告が多く掲示されていた。広告自体は欧米でよく見かけるものとそう変わらないが、広告に書かれているキリル文字を目にすると、ウクライナに来たんだなという実感が湧いてきた。

  40分くらい走ったところで、地下鉄の駅に到着した。バスを降りて地下鉄に乗り換える。キエフの地下鉄はどこまで乗っても、路線を乗り換えても駅から出ない限り片道5フリヴニャで移動ができる。駅の構内にある窓口で5フリヴニャを渡すと、使い古された水色のプラスチック製のコインを受け取った。そのコインを改札口にあるコイン投入機に入れると、「ピッ」という70年代風の古めかしい機械音が小さな音で鳴り響く。長い長いエレベーターで地下に降りていくと、ようやくプラットホームにたどり着くことができた。

  プラットホームで電車を待っていると、すぐに電車はやってきた。電車に乗ると、ロシア語かウクライナ語のアナウンスの後に、聞き取りやすい英語で次の駅名と、ドアが閉まりますというアナウンスが流れた。ロシア語とウクライナ語の違いすらわからない私にはウクライナ一人旅は難易度が高いように思われた。しかし、キエフに来てみると、年配の人には英語が通じないものの、40代からの世代は英語が通じることが多い。なによりウクライナ語の下には英語表示があり、それほど苦労することなく移動することができた。路線図を見ていると、キリル文字の下に英語で駅名が書かれている。しかし、綴りが複雑でどうやって発音するのかわからない駅名が多い。

  地下鉄から地上に上がると、駅前にはコーヒーショップ、パン屋、タバコ屋、ケバブ屋、アイスクリーム屋など飲食店が一通り揃っており、滞在中に食べ物に困ることはなさそうな環境が揃っている。キエフの中心地からわずが3駅ほど離れているだけだが、駅周辺には高い建物がないせいか、空が広く開放感があって心地がいい。

  バンコクで購入したタバコの残りが少なくなっていたので、タバコを購入することにした。マルボロ、キャメル、パーラメントなど、どこの国でも見かける銘柄が売っている。マルボロの値段を見ると、なんと1箱144円破格の安さで売っていた。まさかマルボロが144円で売っているとは思わなかった。他のタバコを見ていると、見たことがない銘柄のタバコはさらに安い価格で売っている。1箱21フリヴニャで売っているストロングというタバコを購入することにした。円にするとわずか88円で、私が旅してきた国の中でもかなり安い部類に入る。

  キエフに来てお金を使ったのは、空港からのバス829円、地下鉄21円、タバコ88円だけだが、それでも十分この国の物価の安さを実感することができた。

  宿に着くと、まだ午前9時を回ったところだったが、チェックインをさせてくれた。バンコクからイスタンブールに向かう飛行機の中で長い時間寝てきたとはいえ、ベットの上でごろごろしているといつの間にか眠りについていた。

  夜、宿の近くにある駅周辺に散歩に出かけた。駅周辺は人が多く、治安は悪くないように思える。

  バンコクからキエフに着くと、ここは楽園だなと思った。この日のキエフの気温は28度とバンコクにいた時とさほど変わらないが、湿度がないだけで体感温度がぜんぜん違った。駅から宿まで約10分ほど歩いてみたが、約18キロの重い荷物を背負って歩いているにもかかわらず、汗をかくことはなかった。

 タイでは暑さのせいかすっかりと行動力が落ちてしまったが、ウクライナでは活発に行動することができそうだ。

 

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