オーストリア

ウィーンのストリートアート【オーストリア旅行記】

  オーストリアの首都ウィーンに来る前は、ストリートアートとは無縁そうな都市のイメージを抱いていた。ウィーンは芸術の都と呼ばれているが、クラッシックミュージック(ベートーベン、モーツアルト)や絵画(グスタムクリムト)など、伝統的な芸術のイメージが強かったからだ。

  しかし、実際に街を歩いていると様々な地区でストリートアートを見かけることになった。特にドナウ川が流れている川岸の壁には数キロにわたってストリートアートや落書きが数え切れないほど描かれている。  ストリートアートを見ながら歩いていると、橋の下で座っている黒人が目に止まった。あいにくこの日は雨が降っており、通りを歩く人の姿が少なかったせいもあってか、どことなく治安が悪そうな雰囲気が漂っていた。私はトラブルに巻き込まれないように男から距離をとって歩くことにした。

  男は声をかけてくる素振りはなかったが、私が歩いているのをじっと眺めていた。男の様子を横目で窺いながら歩いていると、突然「おい!」と声をかけてきた後に「電話持ってるか?」と英語で話しかけてきた。言葉には出さなかったものの首を横に振って持ってないことを伝えた。すると男はすぐに諦め私から視線をそらした。

  ストリートアートを眺め、写真を撮っていると、ふと先ほど話しかけてきた男の様子が気になった。男の方を振り返ってみると、頭を抱えてうずくまっているのが目に入った。何か問題でもあったのだろうか。非常に困っているように見える。

  Uバーン駅に戻るときに思い切って男に話しかけてみることにした。「どうしたの?」と尋ねてみると、「プリゾナからウィーンに着いたばかりで、友人が迎えに来る約束だが来ないんだ。待ってても友人は迎えに来ない。おまけにお金は少ししか持ってないし、電話も持っていないので連絡が取れずに困っている。」

  電話を持ってないか男に聞かれた時、電話を貸してそのまま走って持ち去られた困るから貸さなかった。男の抱えている事情がわかると、私はポケットからスマートフォンを取り出して男に渡した。男は電話をかけると、すぐに友人に繋がったようで聞いたこともない言語でしゃべりだした。

  2、3分くらい通話をしていただろうか。友人と話しているのを横で聞いていると、喋っている内容はわからないものの、男の表情は明るくなり、声が弾んでいることに気づいた。電話が終わると、男は出会った時とは別人にでもなったかのような笑顔で「忙しくてすぐには迎えに来れないが、3時くらいに迎えに来てくれる。電話貸してくれてありがとう!本当にありがとう!!」と一気にまくし立てた。

  初めはあまり雰囲気が良い場所ではなかったこともあり、男の事情など知らなかった私はトラブルに巻き込まれないか疑ってしまった。そもそも男がどこから来たのかなど、話してみるまで私には知る由もなかった。中欧で黒人を見かけたら、移民かなと思ってしまう。それほどヨーロッパには移民が増えているからだ。

  海外での不安。私もコロンビアやキューバで助けてもらったことが度々あった。そのせいか、海外で困っている人を見るとほっておけない自分がいる。私の受けた恩は本人には返すことはできないが、誰か困っている人の役に立つ機会があればなと思っていた。

  その後は1駅分ほど歩いてグラフティを見ながらホステルに戻ることにした。

 翌日は別の地区のストリートアートを見に行くことにした。Obeyのポスターが貼ってあったり、店のシャッターにも描かれていたり、想像以上にウィーンではストリートアートを見かけた。

 

 

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